時間は、過去から未来に流れていると私たちは感じている。
過去から未来の方向に流れていることから「時間の矢」と呼ばれている。
しかし、この時間の流れる方向であるが、ニュートン力学では過去と未来の区別はできない。
例えばビリヤードで玉突きをビデオ撮影した場合、逆再生しても違和感はない。(厳密には摩擦による減速がない場合)
過去と未来の違いはどこから来ているのだろうか。
なぜ逆転することはないのか。
過去と未来の違いはどこから来ているかについては、「時間の矢」のタイプ別に考えてみる必要がある。
「時間の矢」には、以下の5つのタイプがある。
(1)熱力学的な時間の矢
・ボールを転がしたとき、ボールの転がるスピードは徐々に減速していきやがて止まる。
・止まった状態からボールが動き始めるはずはない。
・熱いお湯は、時間とともに冷める。冷めた水が何もしないのに沸騰することはない。
・グラスを落とすと壊れるが、壊れたグラスが元のグラスに戻ることはない。
これらのことは、過去と未来は明確に区別できる。
これらは、熱力学の第2法則(エントロピー増大の法則)に則った現象である。
熱力学の第2法則は、ものごとは確率が低い状態から確率が高い状態に向かうというものである。
例えばグラス壊れる前と壊れた後では、壊れた後の方が状態の確率は高いのである。
(2)波の時間の矢
・池に石を投げ込むと同心円状の波紋が出来る。波紋が1点に収縮することはない。
・煙突から煙が上がるが、上がった煙が煙突に吸い込まれることはない。
これらも、過去と未来を区別できる。
(3)進化の時間の矢
生物学的な進化以外に宇宙の進化、地球の進化などいろいろな進化があるがこれらも過去と未来を区別することが出来る。
(4)意識の時間の矢
私たちは、過去の出来事と現在、起きていることを明確に区別出来ている。過去の出来事を頭脳に記憶しているためである。
コンピュータに例えると情報を記憶することにあたる。
情報を記憶するということは、情報が増えるということである。
意識の時間の矢は、情報量が増大することで起きていると考えることができる。
(5)宇宙論的な時間の矢
宇宙は、約150億年前にビックバンと呼ばれる爆発により急速に膨張してできた。現在も膨張を続けている。その宇宙が膨張する方向を「宇宙論的な時間の矢」と呼ばれる。
5つタイプの「時間の矢」のうち「意識の時間の矢」以外は、実は全て「宇宙論的な時間の矢」から導かれる。
「意識の時間の矢」は、進化の過程で獲得した能力であるためある意味、「進化の時間」の矢に含めることができる。
つまりビックバンがあったから時間の流れができたと言える。