「マクスウェルの悪魔」は、エネルギーが低いところから高いところに流れるという、物理法則ではありえないことが可能であるとする思考実験である。
例えば、仕切りがある水槽の左右に20度の水と90度のお湯が入っていた場合、物理法則では、90度の熱は、20度の水の水槽に流れだし、温度が左右の水槽で均等となると熱の流れは止まる。
これが、「マクスウェルの悪魔」の思考実験では、20度の水の熱が90度のお湯の水槽に流れていき90度以上に温度が上がり、20度の水槽の温度は、20度以下に下がっていくという常識から外れたことが起きることになる。
もし、これが可能であれば、電気、石油などの燃料を必要としないストーブが作れることになる。つまり無限にエネルギーを作れるというわけだ。
「マクスウェルの悪魔」の思考実験
「マクスウェルの悪魔」の思考実験は次のようなものである。
以下の図のような密閉した容器を2つ用意する。(A、B)
2つの容器(A、B)は、小さい窓でつながっている。
この窓は開閉できるようになっている。
この窓には、「マクスウェルの悪魔」がいて、空気の分子の早いものが来たら窓を開いてA容器からB容器へ、遅い分子が来たらは、B容器からA容器へと通り抜けさせる。
この窓を開閉するエネルギーは無視できるくらい小さい。
このようことを行うと分子の早いものはB容器へ、遅いものはA容器に移っていく。
これは、すなわち、B容器は温度が上がり、A容器は温度が下がるということになる。
(分子が早いということは温度が高く、遅いということは温度が低いことを意味する)
これは、最初に述べたエネルギーが低いところから高いところに流れるという、物理法則ではありえないことである。
ここで疑問が出てくる。
「マクスウェルの悪魔」は、窓の開閉のためにエネルギーを使っているのではないかと。
しかし、理論的には窓の開閉のためのエネルギーは必要ないらしい。
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典より引用(著者User:Htkym)
この問題は、なんと1982年まで解かれることはなかった。
解いたのは、IBM社員である。
解決の糸口は、「マクスウェルの悪魔」の記憶にあった。
「マクスウェルの悪魔」は、窓の開閉のために分子の速度を監視するとともに、速度を記憶しなければならない。そして次の窓の開閉のためにその記憶を消さなければならないが、この時にエネルギーが必要になる。
このことは、「マクスウェルの悪魔」が思考実験のように働くためには、エネルギーが必要であるとういことだ。
つまり、電気、石油なしでストーブはやはり使えないということだ。