宇宙には、科学ではまだ説明のつかない謎が多く存在する。その中でも近年、天文学者たちを驚かせた現象がある。恒星「KIC 8462852」、通称「タビーの星」である。この星は、ケプラー宇宙望遠鏡による観測で、極めて異常な減光現象を示した。なんと光が突如として最大20%も減衰し、それが数日間にわたって続いたというのだ。
通常、恒星の光の変化は、前を惑星が通過する「トランジット」によって説明される。だが、KIC 8462852の減光パターンはあまりに不規則で、大きさも周期も一定ではない。自然現象では説明できない異常さが、この星を特別な存在にしている。
そして、浮上したのがSF的な仮説である。――この減光は、巨大な人工構造物が恒星の前を横切っていることによるのではないか、というのだ。すなわち「ダイソン球」の存在である。
ダイソン球とは、高度に発展した文明が恒星のエネルギーを最大限に利用するために建造した、恒星を囲む人工的な構造物である。理論物理学者フリーマン・ダイソンが提唱したもので、彼の名を冠している。完全な球体ではなく、無数の太陽光発電衛星の集合体であってもよい。このような構造物が存在すれば、恒星の光を遮ることで地球から観測される明るさが不規則に変化する可能性がある。
SF界では、このコンセプトは幾度となく登場している。たとえばラリー・ニーヴンの名作『リングワールド』に描かれる巨大な環状構造物は、ダイソン球の変形バージョンともいえる。恒星の周囲を取り囲む、人工の世界。そこには文明の叡智と野望、そして宇宙的スケールの美が共存している。
もちろん、KIC 8462852の異常が本当に人工物によるものであるという証拠はない。巨大な彗星群や塵の雲など、自然現象による仮説も依然として有力である。しかし、この星が「宇宙文明の痕跡かもしれない」と思わせるに十分なロマンを秘めているのは確かである。
果たしてKIC 8462852の向こうに、我々より遥かに進んだ知的生命体が存在するのか。謎は未解明のままだが、宇宙の沈黙の中に、かすかな人工の気配が漂っているように思えてならない。今後の観測に、大いなる期待が寄せられている。
Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161006-00010002-sorae_jp-sctch
